<金口木舌>イランとこたつ


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 「イラン」という国から何を思い浮かべるだろうか。先日、米国の大学院で学ぶイラン出身の女性と、日本との共通点の話になった

▼彼女が見せたのは「こたつ」の写真。「コルシ」という伝統的な家具で、家族が囲んで暖を取る姿は昔の日本のお茶の間にそっくり。ドラマ「おしん」やアニメ「キャプテン翼」も大ブームだったそう。シルクロードでつながっている、と盛り上がった
▼イラン暦では、春分の日に新年「ノウルーズ」を迎える。リンゴや酢などペルシャ語で「S」の頭文字から始まる「お供え物」に、沖縄の旧正月を思い出した。暮らしをかたどってきた暦と伝統。1年の多幸を願う大切な日だ
▼そのノウルーズを祝福する声明で、トランプ大統領はイラン政府指導部への非難を盛り込んだ。入国禁止令をはじめ、イラン敵視発言を連発する大統領は、核合意を評価したティラーソン国務長官も解任した。政権の姿勢が人々の生活にどう影響するか、お構いなしのようだ
▼イラン出身の米国籍男性は「中東と言うだけで、危険、怖い、テロリストというイメージを持つ人もいる」と社会の不寛容さを懸念する。「でも、そんな先入観を持つ前に、あなたの隣にいる人と話をしてみて」
▼ニュースでは社会の分断ばかりに目が行くが、地図を広げればちゃんと世界はつながっている。理解を深めるのは、対話しかない。