<金口木舌>家族の愛情とボウリングという希望


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 春休みが始まったこの時期は、全国各地で各種スポーツ大会が一斉に行われる。この冬の鍛錬の成果を試し、今の実力を知る大切な大会だ。選手の成長が見え、取材の楽しみも増える

▼新学年を前に、スポーツの夢を広げる小学生がいる。全沖縄女子オープン(1月)で頂点に立った宇栄原小5年の砂川舞佳さんだ。4カ月におよぶ小児がんの闘病生活を乗り越え最年少で優勝した努力家
▼小学4年の12月、突然の腹部の出っ張りから卵巣がんが判明した。治療、手術、また治療と続く日々は本人や両親も苦しかっただろう。父の尚毅さん(48)は病気の原因は親かと、自身を責める時期もあったという
▼「弱音は競技に禁物」と日常から気持ちを強く持つ大切さを言い聞かせてきた母の優子さん(43)が、治療中に髪の毛が抜ける娘にも強気な言葉を掛け続けた。舞佳さんに戻った笑顔は、家族の喜びとなった。逆境と向き合う時、前向きさは奮起の源だ
▼退院翌日からボウリングを再び始めた。大好きなボウリングを続けたいという強い思いが闘病生活を支えた。術後1年を超え転移はなく、プロや日本代表など新たな目標ができる
▼今、舞佳さんから弱気な発言は消えた。家族の愛情とボウリングという希望。スポーツは生きる力と夢を与える力を持っている。一人の少女の想像を絶する体験が、私たちに教えてくれた。