<金口木舌>人事権は権力の源泉


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 サラリーマンにとって、3月は人事異動の季節。新聞紙面には企業や官公庁の人事が毎日のように掲載される。希望する部署へ異動になった人、不本意な異動に戸惑う人などそれぞれだろう

▼人事を決定する側はどのような気持ちなのか。トップにとって、人事権は権力の源泉なのかと思わざるを得ないのが、官僚の忖度(そんたく)である。安倍政権を見ていると、人事権は絶大だと感じる
▼文部科学省の前川喜平前事務次官が名古屋市内の中学校で行った授業について、文科省が政治家の照会に基づき、市教育委員会に報告を求めた。教育への政治介入と受け止められかねない問題である
▼照会したのは、自民党の2人の国会議員だった。官僚が政権与党の政治家からの依頼を断れないのは、依頼してきた議員たちの背後に、人事権を掌握する官邸の影を感じたのか。森友疑惑同様、過度な忖度があったと察する
▼安倍政権は巧みに官僚を操り、反旗を翻した前川氏には見せしめのように嫌がらせをする。さらに森友疑惑の全責任を、佐川宣寿前国税庁長官に押し付けようとしている
▼官僚が官邸の機嫌をうかがっているのか、政治家が人事権を盾に支配を強めているのか。いずれにせよ、その弊害は国民にのしかかる。われわれサラリーマンは、自分の人事は動かしようもないが、政権与党に投票でノーを突きつけることはできる。