<金口木舌>過疎の村の魅力


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 やんばるの緑深い県道70号を北上し、国頭村楚洲を取材で訪ねた。世界自然遺産への登録を目指すやんばるの森は、ヤンバルクイナなど貴重な動植物が生息し、豊かな生態系を誇る

▼一方で、村の人口は減り続け、過疎化が大きな課題となっている。児童生徒が減った楚洲小中学校は、2004年に閉校となった。区長の前川尚之さん(66)は、児童が1人だけの学校で、次女が最後の卒業生になった
▼かつて、運動会など学校行事には、子どもがいない家庭も住民挙げて参加した。「学校は一つのよりどころ。なくすことについて、楚洲はどうなるのかと、区民でけんけんがくがくの議論をした」
▼「断腸の思い」で受け入れたという閉校。学校跡は現在、高齢者のデイケアや、村東部を対象にした保育所などの複合施設となり、新たな交流が生まれている。「当初は寂しい思いをしたが、今は良かったと思っている」と前川さん
▼夏には公民館前に村営住宅ができ、6世帯が入居予定という。少しでも区の住人が増え、農業や漁業の担い手になることに期待している。「土地も海もあり、夢が持てる場所だ」と胸を張る
▼自身も畜産農家の募集に応じ、約40年前に移り住んだ。「何もない田舎暮らしだが、一つ一つ自分たちで解決していくのも魅力」。過疎の村にも、たくましく、前向きに生きる人々の暮らしがある。