<金口木舌>ランドセルの物語


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 校舎に入ると、靴箱そばの台の上に6年生の色とりどりのランドセルがずらりと並んでいた。その全てに、卒業を前にした子どもたちが書いたメッセージが添えられていた

▼「最初は苦手な色だったけど、今は好きです」「雨の日も晴れの日も一緒にいたね」「転んでけがをしそうになった時に守ってくれてありがとう」。6年間共に歩んだ大切な“相棒”との一人一人の思い出であふれていた
▼浦添市の当山小学校は毎年、卒業式近くになると、6年生のランドセルを展示している。今年も、児童の言葉から周りの人たちへの感謝の気持ちや、物を大切にする心が育まれている様子が伝わった
▼22日付本紙に、祖父からもらった一つのランドセルを12年間持ち続けた那覇市内の姉妹が紹介された。石垣島に住んでいた祖父は7年前に他界したが、祖父の思いを胸に姉から妹へと受け継がれ、使い続けられた
▼12年の間に、肩ひもの一部や内側の部分がぼろぼろになったという。古くなり、見栄えはよくなかったかもしれないが、姉妹は亡き祖父の愛情を背中ではっきり感じ取り、大切に使ったはずである
▼一部の学校や児童に限ったものではない。ランドセルは児童や家族にも思い入れある宝物になる。間もなく進級、入学シーズン。子どもたちの成長を記した新たな物語が一つ一つのランドセルに刻まれることだろう。