<金口木舌>北部医療、先行者の責任


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 入学式シーズンの真っただ中。名護市為又の北部看護学校でも、黒のスーツ姿の84人が入学し、白衣姿の職員たちが温かく見守った

▼名護市出身の宮里涼奈さんの新入生宣誓が印象的だった。学業専念を誓うとともに、到来する超高齢社会などに触れた。「看護師不足が指摘される中、北部地区は病院も少なく、救急対応も課題です。看護師になって貢献したい」
▼北部は慢性的な医師と看護師の不足に直面し、救急医療体制の脆弱(ぜいじゃく)性が指摘される。県立北部病院では外科や産科などで後任医師が見つからず、週の診療日数が制限されることもしばしば
▼命に直結する医療の充実は、住民の切なる願い。定住するためにも地域完結型の医療は重要だ。県推計によると、2025年時点でも北部住民で入院を必要とする1割が、中南部へ行かざるを得ない
▼人手不足を解消し、安定的な医療体制を目指そうと、県立北部病院と北部地区医師会病院の統合による基幹病院整備の動きも進む。約220億円と試算される事業費負担、統合後の職員待遇などの課題は多い。何よりも働きやすい医療現場の環境整備は不可欠だ
▼入学式のあいさつでは、看護師への一歩を踏み出した新入生に期待が寄せられた。学生が巣立つ3年後、働く環境は今よりも魅力的だろうか。先を歩む者たちには期待するだけでなく、環境を整えていく責任もある。