<金口木舌>古代への情熱


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 架空の物語と思われていた古都の存在を信じ、実際に発掘して証明したのはドイツの考古学者シュリーマンだった。古代の人々の暮らしを想像するのはロマンがかき立てられる

▼石垣島の白保人の人骨発見も関係者の興奮を思うと想像に難くない。今回、その顔が復元された。約2万7千年の時を超えて現代に蘇(よみがえ)った旧石器人の顔。知ってる誰かに似ていると思った人も多いのではないか
▼白保人は全身骨で見つかったが、それでも欠けている部分も少なくない。欠けて無い部分をデジタル技術で補って復元し、3次元プリンターで出力した模型に肉付けして復顔した。関係者の根気と執念の結実だ
▼東京・上野の国立科学博物館の企画展「沖縄の旧石器時代が熱い!」で復顔と対面できる。沖縄に先駆けての県外公開には疑問の声もあったと聞くが、古代への情熱を抱きつつ沖縄帰還を待ちたい
▼日本人のルーツかと長く注目されてきた港川人と比べると、似ているようで似ていない。白保人の方がやや頬骨が張っているだろうか。沖縄本島と石垣島で海を隔てた環境の違いがどう影響したか。興味は尽きない
▼顔と正対してカメラを構えた。ファインダー越しの白保人はどこか遠くを見つめ、なんだか思慮深げに見えた。この顔が現代のわれわれに何を語り掛けるか、その目に現代の沖縄はどう映っているだろうか。