<金口木舌>県民との伴走 5000回


この記事を書いた人 琉球新報社

 「サザエさん」の作者、長谷川町子さんの背中を追いかけてきた。そう語る、ももココロさんの「がじゅまるファミリー」が5千回を迎えた。足掛け14年と4カ月にわたって、ウチナーンチュ家族の笑顔を届けてきた

▼日々の紙面に目を通し、地域行事に足を運んで漫画のネタを探す。県民生活の中にアイデアの泉がある。湧き出てくる水は爽やかで、甘く、ときにほろ苦い。毎日、掘り当てるのは大変だろう
▼長谷川さんも苦労した。連載をマラソンに例えたという。漫画の案が出ない日は七転八倒。努力すればするほど、締め切り時間が容赦なく迫ってくる。自叙伝「サザエさんうちあけ話」で振り返っている
▼新聞連載ゆえ、4こまは時代の映し鏡となる。敗戦直後に始まった「サザエさん」は進駐軍を描き、高度経済成長を経て1970年代の公害や石油危機をネタにした。長谷川さんはピリッとわさびを利かし、世相を活写した
▼ももさんが描く家族の物語はほのぼのとしているが、それだけではない。おじい、おばあは沖縄戦の悲しい記憶を背負っている。米軍機の騒音に悩まされる。祖先を思い、平和な沖縄を願っている。それは私たちウチナーンチュの姿でもある
▼戦後を歩んだ「サザエさん」は6477回続いた。「がじゅまるファミリー」は県民と伴走している。ももさんも一緒に、ペンを握って駆けている。