<金口木舌>景観との調和


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 「周辺に愛される光を考える」。照明デザイナー戸恒(とつね)浩人(ひろひと)さんの言葉だ。落成した琉球新報社新本社ビルの外観照明を担った

▼事業主は建物が目立つ照明を求めがちだ。ビルだけが目立つと街の景観を壊しかねない。戸恒さんは建物がある街を見て回り、歴史を調べ、街の雰囲気に合った照明を考える
▼景観に合わない、という理由で京都大学吉田キャンパス周辺の立て看板が撤去された。京都市の屋外広告物条例に違反するとして、大学が強行した。京大の看板は名物にもなり、地域からも愛された
▼入試問題のミスが発覚した際は「(問題を)信じるな」。撤去騒動のさなかには「看板撲滅」との巨大看板を掲げた。ユーモアにあふれ、「景観としてなじんできた」「なければ京大じゃない」などの声も上がる。大学側は話し合いを求める学生に応じなかった
▼一定の異論がある場合は権力側が一方的な考えを押し付け、強行することがあってはならない。石垣市は観光客の受け入れ態勢の充実などを理由に、建築物の高さ制限の緩和方針を示した。地域住民が川平湾の景観を守ろうと、会を結成し異を唱える動きもある。対話での解決を目指してほしい
▼景観との調和を巡るトラブルは後を絶たない。所有者や周辺住民らとの調和の問題でもある。建物が街の一角を担うのであれば、周辺や地域住民に愛される建物でありたい。