<金口木舌>宮森小学校を襲った米軍機墜落事・・・


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 宮森小学校を襲った米軍機墜落事故から約1年後、娘を亡くした遺族を琉球政府の職員が訪ねた。賠償金交渉のためだった。アイゼンハワー米大統領来沖の数日前というタイミングである

▼賠償額には納得できなかったが「ぜひ、来沖までに補償問題を解決してほしい」と職員に求められ、やむなく受け入れた。大統領来沖前の決着を目指す米側と琉球政府の交渉過程が先日、米側資料で分かった
▼2000年サミットの直前、遺族からこの話を聞き、記事にした。「基地問題が未解決な状態で沖縄に行きたくない」というクリントン大統領の発言もあり、普天間問題とサミットのリンクが批判されていた
▼「クリントン大統領が、来沖までに普天間問題を解決してくれと言ったのと同じではないか」。遺族は40年を隔てた2人の米大統領の来沖を重ねていた。アイク来沖を理由とした賠償問題決着への憤りがよみがえった
▼米軍属が若い女性の命を奪った事件の賠償金支払いで日米両政府が合意した。凶行から2年2カ月のタイミングをどう考えればよいか。事件後も遺族は法廷で苦悶(くもん)を重ねてきた
▼今回の賠償は「自発的、人道的な支払い」と米側は位置付ける。「人道」を持ち出すなら、事件事故を根絶すべきだ。それが宮森小の悲劇をはじめ、今日まで続く県民の怒りと悲しみへの、せめてもの償いではないのか。