<金口木舌>「あなたは何人(なにじん)か」・・・


この記事を書いた人 琉球新報社

 「あなたは何人(なにじん)か」。出身地名を冠に付け大阪人や信州人という呼び方がある。くせの強さや独特のこだわりに注目して、その地域差を肯定的にとらえて使われることが多い

▼では「沖縄人」はどうか。「ウチナーンチュ」と呼ばれるのと違って、過去に「琉球人(沖縄人)お断り」と差別された歴史を想起し、嫌悪感が先立つ人もまだ多いだろう
▼本土の沖縄への無関心をテーマにした劇団東演の舞台「琉球の風」が都内の俳優座劇場で再演された。東京の旅行会社が企画した沖縄ツアーを巡り、基地問題に対するウチナーンチュと県外の人との意識の溝が浮き彫りにされていく
▼「なんで沖縄だけ特別扱いしなきゃならないの?いつも沖縄人は」「俺たちが考えたって、どうこうできる話じゃない」といらだつ東京在住の主人公。だが沖縄の現実に直接触れ、自身の無知に気付き始める
▼演出の松本祐子さんは公演の冊子で「小市民な登場人物たちが“知ることの痛み”を抱えながら紡ぐこの作品に、私もちりちりとした痛みを感じながら立ち向かっている」と書いた。その痛みはどれだけ共有されているか
▼自身を「日本人」と言うのに疑問を持たない人は多い。だが戦後73年、本土の都合で沖縄に基地が集中させられ、今なお新たな基地を強要する日本の姿を知った上で改めて聞いてみたい。あなたは何人ですか。