<金口木舌>母校の近所にあった小さな食堂が先日、店じまいをした。開店から35年余に・・・


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 母校の近所にあった小さな食堂が先日、店じまいをした。開店から35年余にもなろうか。長年、部活動帰りの高校生たちが集う憩いの場だった。閉店を知らせる張り紙には「サンキュー」の文字

▼別れを告げる言葉はさわやかだ。張り紙を見て、少し寂しくなった。高校時代の同級生がこの店でアルバイトをしていた。かき氷を盛ったぜんざいを幾度か食べた。冷たくて甘いぜんざいは、懐かしい夏の思い出だ
▼氷菓子のチューチューも幼い日に親しんだ夏の味だ。黄色やオレンジという氷の色も夏を彩るようで楽しかった。夏休みの真っただ中にある子どもたちは、何を食べて夏を乗り切るのだろう
▼もうすぐ夏の甲子園がやってくる。アルプススタンドの名物はかちわり氷だ。一度食べたことがある。氷を入れたビニール袋にストローを差して冷水を飲む。灼熱(しゃくねつ)の太陽の下で、心地よい涼味を運んでくれる
▼伝統の甲子園も猛暑に揺れている。高野連は熱中症対策に懸命だ。ワイドショーでは「ドーム球場でやってはどうか」「いや、伝統の甲子園だ」と識者が主張をぶつけ合う。球場外の議論も沸騰気味だ
▼きょうから8月、暑い夏はまだ続く。高校生の頃に食べたぜんざいの味は格別だった。クーラーが今ほど普及していなかった時代、暑さが味をもり立ててくれた。あの日のぜんざいをもう一度味わいたい。