<金口木舌>幼い頃、父に叱られ押し入れに閉じ込められた。何で怒られたか記・・・


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 幼い頃、父に叱られ押し入れに閉じ込められた。何で怒られたか記憶にないが、真っ暗闇の中から何か出てくるのではとの恐怖に涙したのは覚えている

▼このお仕置きが引き金になったのかは定かではないが、閉じた空間にいるのが苦手だ。毎日通勤で乗る地下鉄の暗いトンネルの中では、甲高い金属のこすれる音も相まって、何か起こらないかといつも身構えてしまう
▼1995年3月、東京の地下鉄で事件が起きた。官庁やビジネス街を走る丸ノ内線と日比谷線、千代田線の車内でサリンがまかれ、13人が死亡、6千人が重軽傷を負った。閉鎖的な空間の中、どれほどの恐怖だったろう。20年以上たった今も後遺症に苦しむ人は多い
▼一連のオウム真理教事件を起こした教団幹部13人の死刑が執行された。被害者らを取材した作家の村上春樹さんが毎日新聞に寄稿し「ただひとつ今の僕に言えるのは(中略)オウム関連の事件が終結したわけではないということだ」と記した
▼オウム真理教とは一体、何だったのか。大学生の頃、同級生がオウムに入信していた。彼が事件に関わることはなかったが、社会の行き詰まりを感じて何かを求めたい気持ちは理解できた
▼教団幹部らはいなくなり、謎は残った。われわれは、暗いトンネルを抜けて出口に光を見るように、この社会の闇の中に光明を見いだしていくしかない。