<金口木舌>幼い頃の夏の夜、畳間に寝ていると、障子の向こうに雪女が現れる・・・


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 幼い頃の夏の夜、畳間に寝ていると、障子の向こうに雪女が現れる夢をよく見た。はっと目が覚め、怖くて眠れなくなった

▼大人になり、夜を美しく描く映画に出合った。ミッシェル・オスロ監督のアニメーション「夜のとばりの物語」だ。舞台は古い映画館。好奇心旺盛な少年と少女が映写技師と共に、夜な夜なお話の世界を紡ぐ
▼情熱やアイデアで困難に立ち向かう愛の物語を、鮮やかな色彩と影絵で描く作品だ。不公平なことや暴力を許せないという思いが、物語を作る原動力というオスロ監督は、フランスに生まれ、幼少時代をギニアで過ごした。その体験が代表作「キリクと魔女」を作った
▼小さな男の子、キリクが生まれたアフリカの村は魔女の呪いで泉は枯れ、人々は苦しんでいた。大人たちが恐怖で動けずにいる中、キリクは「なぜ、魔女は意地悪なの?」と問い続け、村を救う
▼キリクの武器は、知恵と勇気と「なぜ?どうして?」という問い。小さな体で魔女に立ち向かう姿は、小さな島に大きな米軍基地を押し付ける政府に声を上げる沖縄の姿と重なる。オスロ監督は「直面した問題に自ら立ち向かうこと。私のヒーローたちはみんな自立している」と語る
▼11日に辺野古沖の埋め立て土砂投入に反対する県民大会が開かれる。明けぬ夜はない。恐怖や無力感で立ち止まらず、行動する勇気を共有したい。