<金口木舌>「海波を揚げず」。波が立たない「穏やかな海」から転じ、平和な・・・


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 「海波を揚げず」。波が立たない「穏やかな海」から転じ、平和な世を表す慣用句。故事に由来し、中国語で「海不揚波」と書く。平和を願う思いは対岸の人々も同じだ

▼中国福建省福州市にある琉球館に、この言葉が額で飾られている。2013年、尖閣の領土問題の取材で訪ねた際、現地職員が説明した。「琉球や福州の人々が往来する時の安全な航海への願いが込められている」
▼きょうは日中友好条約締結から40年。条約は互いに覇権を求めず、領土保全の相互尊重などをうたう。72年の日中共同声明では「すべての紛争を平和的手段により解決し、武力又は武力による威嚇に訴えない」と国交を正常化した
▼15世紀ごろまでに設置された琉球館は、沖縄の人々の宿泊地として利用された。名護市辺野古の新基地建設をめぐる県と国の訴訟で、8日に亡くなった翁長雄志知事も意見陳述で触れた
▼古くからアジアで交易する沖縄の将来像として、アジアの懸け橋になると唱えた。先月27日、辺野古埋め立ての承認撤回を表明した会見でも熱っぽく語った。最後の公の場で「アジア」と発すること14回
▼基地建設を強行する政府に「日本がアジアから締め出される」と危機感も示した。きのうの県民大会で、知事が座るはずのいすには辺野古の海をイメージした色の帽子が置かれた。青い海を荒波で白く濁らせてはならない。そんな声が聞こえた。