<金口木舌>作家の向田邦子さんは土井晩翠作詞の「荒城の月」の一節を間違っ・・・


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 作家の向田邦子さんは土井晩翠作詞の「荒城の月」の一節を間違って歌ってしまうと書いた。有名なエッセー「眠る盃」だ。酔いつぶれた父親の姿と杯が重なるとつづった

▼夏になると当方にも似た記憶がある。誰も外を歩かない夏の盛りに甲子園で活躍する県勢が映るテレビ画面と「水産の利は」の歌声だ。沖縄水産高の校歌斉唱である。同校が1984年から5年連続で出場していた頃、小学生だった
▼85年は3回戦、翌年は8強進出の快進撃だ。校歌が耳に残って離れなくなった。歌い方は抑揚を付けて「すぅい、さぁん、のぉりは」となる。音だけですり込まれたものだから「水産のおり」という単語があると思っていた
▼100回記念大会に出場している興南が土浦日大戦で県勢夏の70勝目を挙げた。これまでの各代表校がつかみ取ってきた勝利の積み重ねで達成された数字だ
▼勝利数を都道府県別に見ると70勝は18位。174勝で首位の東京は74年から東西2校が出ているほか、沖縄県勢が初出場した58年の40回大会までに36勝を挙げている。上位他県の戦績に比べても、70勝はかなりの勝率になる
▼県勢は春の選抜で28勝しており、今回の選手権には春夏通算100勝の期待もかかる。まずは目の前の1勝、目の前のワンプレーからだ。「ああ南海の」の校歌を何度も歌ったと、記憶に刻まれる夏になれば、なおいい。