<金口木舌>人頭税の時代は


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 猛暑に豪雨、台風、地震―。今年は日本中が異常気象や災害に襲われた。北海道の地震では深刻な電力不足などで再建がなかなか進まないが、相互扶助の精神で義援金が送られている

▼異常気象による影響は世界中に現れている。国連食糧農業機関によると、2017年は慢性的な栄養不足に苦しむ人の数が世界で推定約8億2100万人に上った。豪雨や干ばつなどが増えたことで農作物生産に影響を与え、食料不足につながったという
▼日本は飽食とされるが、さまざまな事情で満足に食べられない人もいる。浦添市ボランティア連絡協議会の事務所には、缶詰や米などが並ぶ。有志から贈られたもので、食事に困っている人に届けられる
▼社会福祉の原資は税金だが、納税のみならず、身銭を切ることで社会的弱者を救おうとする人たちがいる。だが、かつては弱者を切り捨てた悲しい伝承も残る
▼人頭税がまだ存在した琉球王朝時代。与那国島の久部良では人口調節のために妊婦を「久部良バリ」と呼ばれる岩の裂け目から跳ばせたという。口減らしは年老いた親を山に捨てる「姥捨山(うばすてやま)」の言い伝えとしても各地で伝えられている
▼さて、今の日本の高齢者を支える社会福祉は十分だろうか。今日から「老人週間」が始まる。社会の基盤をつくり、子や孫を育ててくれたお年寄りに感謝し、ゆいまーるの精神で支え合いたい。