<金口木舌>月とオキナワ


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 月面着陸した米宇宙船アポロと聞き、何を思い浮かべるだろう。宇宙船を模したチョコレートはおよそ半世紀続くロングセラー商品。目を輝かせ、食べた人には甘い思い出だ

▼1971年、月から帰還したアポロ15号が太平洋に着水し、米軍のヘリコプター空母「オキナワ」が回収した。「オキナワ」はベトナム戦争など東西冷戦の最前線に送られ、沖縄にも寄港した
▼72年を最後に人類は月から遠のいていたが、米国と中国がそれぞれ新たな月面着陸計画を打ち出した。火星探査を見据え中継地の役割を期待する。宇宙開発という名の軍拡競争が再燃しそうだ
▼3月、日米欧や中国など45の国と国際組織が東京に集い、月や火星、太陽系に探査を拡大することを協議した。目標達成のため国際協力の重要性を確認し、平和目的や人類全体の利益になることを共同声明に盛り込んだ
▼民間初の月旅行も2023年に予定する。ネット通販を手掛ける前沢友作さん(42)が米宇宙企業と契約した。月を周回する計画で、前沢さんは芸術家6~8人を招く。「月や地球を見た時の感動を多くの人と分かち合いたい」
▼宇宙から眺める地球は美しいという。一度でいいから見てみたい。片道3日、38万キロ離れた月から人類はどう映るのだろう。無限なのは宇宙か人の欲望か。こよいは十五夜。中秋の名月を眺め、想像してみよう。