<金口木舌>瀬長亀次郎とデマ

 「人民党はあんなものだ、人殺しや強盗などと一緒になり、扇動して善良な市民生活をおびやかす党だ」。そんなデマが流布されていたと、人民党事件で投獄されていた瀬長亀次郎さんが1954年の日記に書き残している

▼収監中に起きた沖縄刑務所暴動事件を瀬長さんが扇動していたかのような言説だ。立法院議員選挙を目前に控えていた。選挙にデマは付き物という人もいるが、虚偽の情報で有権者の対立をあおることは許されない
▼今回の沖縄県知事選でも真偽不明の情報がネット上で多数、拡散された。若手著述家の古谷経衡(ふるやつねひら)さんが、ヤフーニュースの記事で知事選を論じている
▼「玉城デニー氏が当選すれば、沖縄は中国に乗っ取られる」といった荒唐無稽の陰謀論を叫ぶ人々が佐喜真淳氏を応援したことによる悪影響を指摘した。「ネット右翼活動家」は「いかなる陣営にとっても害毒しかもたらさない」と断じている
▼デマや弾圧に負けずに闘った瀬長さんは2001年のきょう、94歳で亡くなった。50年の沖縄群島知事選挙では「人民が声をそろえて叫んだならば、太平洋の荒波を越えてワシントン政府を動かすことができる」と団結を呼び掛けていた
▼新基地建設阻止に向けた道は平坦(へいたん)ではないだろう。デマに左右されなかった県民が強固な意志を明確に示した今、瀬長さんの言葉をかみしめたい。