<金口木舌>新聞週間、変えたい思い


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 「盗みにおびえ眠れず」「スラムは水不足、市営企業に援助求める」。見出しが躍るのはインドの首都ニューデリーの月刊新聞バラクナマ。記者たちはスラム街で暮らすストリート・チルドレンだ

▼題字の意味は「子どもたちの声」。非営利団体の考案で2003年に刊行し、ヒンディー語版と英語版がある。最新はことし5―6月号。読み書きができない子は情報提供役に徹し、収益は教科書やノートに充てる
▼子どもが薬物の運び屋をしたり、警官の指示で鉄道事故の遺体を片付けたりする。スラム街の実態を報道すると大手メディアも追い掛けた。「政府も社会も私たちを直視しない」。そう問い掛ける子どもたちは自ら伝えることで世界が変わると信じている
▼本紙は今年1―8月、連載「彷徨(さまよ)う 少年少女のリアル」を掲載し、生活困窮や虐待などに直面する県内の子どもたちの声を伝えた。「大人に話しても何も変わらない」。憤りはバラクナマと共通する
▼きょうから新聞週間が始まった。代表標語は「真実と 人に寄り添う 記事がある」。投稿者の女性は願う。「インターネットにはない、ファクトを追求し人間の心を伝える記事を読みたい」
▼子どもの目には、この世界と大人はどう映るのだろう。せめて「変わらない」との思いだけでも変えたい。一つの記事が社会を動かしたことも私たちは知っている。