<金口木舌>手をこまねいている場合でない


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 記者会見で突拍子もない質問に面食らうことがある。日米関係がテーマでも米メディアは斟酌(しんしゃく)しない。世界情勢など、時に応じてさまざまな問題についてただす

▼2011年6月、国務省で開かれた日米安全保障協議委員会後の会見。国務長官だったヒラリー・クリントン氏に対し、米記者が質問したのは、サウジアラビアで複数の女性が運転禁止解除を訴えて運転を強行したことへの見解だ
▼「勇敢に権利を要求した行動に心を動かされた。彼女らを支持する」。人権を大切にする米国の指導者らしい、クリントン氏の堂々とした振る舞いが印象に残る
▼サウジアラビアでの女性の運転はムハンマド皇太子が推進する社会経済改革の一環として解禁された。そのムハンマド氏は、現在世界を揺るがしている同国のジャマル・カショギ記者の失踪事件に関与していると複数のメディアが伝えている人物だ
▼カショギ氏はサウジアラビア政府を批判する記事などを書いていた。報道の自由は国民主権を守るために不可欠な要素。18年の報道の自由度ランキングではサウジアラビアは180カ国中169位だ
▼英国、フランス、ドイツの3外相は「重大な懸念を抱いている」と共同声明を発表し徹底調査を求めた。日本は静観するつもりなのか。今や世界中で報道の自由が脅かされている。手をこまぬいている場合ではない。