<金口木舌>ルーツを求めて


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 三省堂の現代新国語辞典が若者の言葉を積極的に採録していて話題だ。「沼」に趣味などに「のめり込んでいる状態のたとえ」との語義が加わった。「やばい」が単なる感動詞としても用いられると紹介している

▼バスの中で中学生の会話が聞こえてきた。男子3人が「なつい」とつぶやいている。スマホの画像を見ているようで、「懐かしい」の意味だと推測できた。前出の辞典にも「懐(なつ)い」は載っていない。違和感を覚えたが、言葉はどんどん変化していく
▼「懐かしい」には懐古に加え「心が引かれて手放したくない」や「いとしい」の意もある。しみじみと「懐かしかった」と語ったのは、この夏、ハワイの親類と対面した中城村の比嘉恒夫さん(75)だ
▼戦前に移民した伯父の孫やひ孫らが村役場に調査を依頼してまで会いに来てくれた。ルーツの地・沖縄、中城を思い続けるハワイの縁者たちだ。初めて顔を合わせたが、いとおしくてたまらなかったようだ
▼比嘉さんは「彼らがいつ来てもいいように、子や孫に先祖からのことをしっかりと伝えていきたい」と語った。きょうは「世界のウチナーンチュの日」
▼異国の地で幾多の困難を乗り越え、しっかりと根を張って生きるウチナーンチュの姿は私たちを勇気づけてくれる。「懐い」を駆使する世代にも、その次の世代にも受け継いでいきたいウチナーの魂である。