<金口木舌>足並みそろわずとも


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 「足並み」の語源を辞書で調べると「人や馬などが、多数で行進する時の足のそろい具合」とある。「足並みをそろえる」は、複数の人や組織が目標に向かうときに行動や考えを一つにすることだ

▼足並みがそろわないのはまだいいが、対立すると問題が尾を引きかねない。福岡市では1889年4月、政府が市制と町村制を公布した際、福岡市にするか、博多市にするかで論争が巻き起こった
▼福岡と博多は同じと考えがちだが、正確には博多が指すエリアは福岡の一部だ。今でも博多と言われると違和感を抱く地域の人もいるらしい。福岡県と福岡市で今、新たな論争が生まれている
▼観光客がホテルや旅館などに宿泊した際に徴収する「宿泊税」。福岡県と福岡市が個別に導入を検討してきたが、「二重課税」の懸念から対立を深めているという。訪日外国人の増加による「観光利権」を巡る争いとの指摘もある
▼沖縄県も観光振興を目的とした新税創設の検討を再開した。玉城デニー知事と県都・那覇市の城間幹子市長は選挙戦で協力し合っており、よもや対立はないだろう
▼だが、課題が山積みの沖縄では、必ずしも県と市町村の足並みがそろわないケースもある。利権で争うのは論外だが、県民、地域住民の生活を守るため意見を戦わせることは悪いことではない。丁寧な説明や話し合いで解決に導きたい。