<金口木舌>沖縄への仕打ち

 横浜国立大や沖縄国際大で教鞭を執った宮城栄昌さんの「沖縄の歴史」を読んでいる。沖縄女性史やノロの研究で知られる歴史学者は、軍事を優先した戦後沖縄の米統治について「沖縄住民の権利を侵害することは必然」と断じた

▼強制土地接収や多発する米軍犯罪を裁く権利が沖縄側にないことを列挙し「近代諸国家の国民に保障されている諸権利」の制約を批判した。軍事優先の象徴たる基地強化にも触れ、B52戦略爆撃機の常駐を挙げた
▼本の奥付によると、初版は1968年11月26日。嘉手納基地にB52が墜落した日から1週間後に当たる。「黒い殺し屋」の大惨事に県民が驚き、激しく憤る中での出版だった
▼それから50年、F15戦闘機が南大東島沖の海中に没した先日の事故を含め、沖縄の陸・海で起きた米軍機の墜落事故は50件に上る。それなのに米軍機は飛行をやめない。軍事優先が続いている
▼その延長上に、新基地建設がある。50回も落ちたというのに、日本政府は米軍機が発着する新基地の建設を沖縄に強いる。およそ「近代諸国家の国民」に対する仕打ちとは言えない
▼「沖縄の歴史」は復帰後も版を重ね、読み継がれた。宮城さんは復帰運動を評価しつつ、72年の復帰そのものは「明治政府の『琉球処分』にも似た姿であった」と記した。ここに歴史家の怒りを見る。安倍政権は反論できるだろうか。