<金口木舌>「テーマ」を顧みる


この記事を書いた人 琉球新報社

 1975年に開幕した沖縄国際海洋博覧会のテーマは「海―その望ましい未来」。その5年前の70年に、大阪で開かれた日本万国博覧会は「人類の進歩と調和」をテーマに掲げた。高度経済成長を誇ったものと思っていたが、勘違いのようだ

▼元東大総長の茅誠司氏を委員長とする日本万国博覧会協会テーマ委員会の議論で65年に決まった。背景にあるのは科学技術への疑念であった。66年6月、参考人として国会に呼ばれた茅氏がテーマの趣旨を説明している
▼科学技術の進歩は人類を幸福にする。そのことを認めた上で茅氏は「必ずしもそれは調和されているとは考えられない」「人類撃滅の機器にも使われ得る」と語った。科学技術の進歩と人類幸福の「不調和」を論じているのだ
▼茅氏の指摘は今も色あせてはいない。制御困難となった科学技術は人類を不幸に陥れる。福島第1原発事故はそのことを証明した。万博のテーマは重い課題を突き付けている
▼海洋博のテーマも同じことがいえよう。「望ましい未来」とは何だったのか、顧みなければならない。少なくとも辺野古の海を危機にさらすようなことではなかったはずだ
▼2025年に大阪で再び万博が開かれることになった。テーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」という。命は今、輝いているのだろうか。私たちが問い続けなければならない課題だ。