<金口木舌>便りの文化


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 雄大な管弦楽がテーマ音楽となった米映画「E・T」が日本で封切られたのは1982年の12月4日。沖縄ではそれから1週間後の11日だった

▼地球外生命体(Extra―Terrestrial)と少年らの交歓を描き大ヒットした。E・Tと少年が合わせた指が光るシーンが思い浮かぶ。実は作品中にこの場面はなく、ポスターなどで象徴的に用いられていた
▼光る指ではないが、それこそ光って震えて、離れた存在をつないだ。ポケットベルのことだ。特定の番号に電話すると端末が鳴る仕組み。後に番号の組み合わせで文字も表示できるようになった
▼「11」で「ア」、「12」だと「イ」といった具合。学生時代、猛烈な早さで公衆電話のボタンを押す同期の女子がいた。聞けば彼氏への連絡という。こうした「ベル打ちの達人」も今は昔。来秋、ポケベルサービスは終了する
▼本紙企画「絵手紙のひろば」の選者、沖縄絵手紙協会の桑江良憲顧問に便りの心得を聞くと「返事はすぐ書かないこと」だそうだ。何を書くか気持ちを熟成させる。何よりも余裕が出るから、やりとりが長く続く
▼スマートフォンの時代。熟成を待って返事を出していたら、にらまれそうだ。ただ、私たちはゆったりとした文(ふみ)の文化も持っている。年に一度、相手を思い浮かべ、筆を持つのもいい。年賀状の引き受けは15日に始まる。