<金口木舌>末期症状


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 沖縄のブルースシンガー知念良吉さんのコンサートを見た。1952年生まれ。基地の街で育ち、沖縄の闇を見つめ、歌ってきた。さまざまな集会のステージに立つので、彼の歌声に接した人も多いだろう

▼代表曲「何処へ行くオキナワンボーイ」も歌ってくれた。「おゝ何処へ行くオキナワンボーイ 悔しさの爪跡を残して」という歌詞が胸に響く。「青空の奥深く」「心の奥底に」のリフレインが心地よい
▼この歌が生まれて30年余。「歌ってくれ」というリクエストが最近寄せられるようになったという。直接的な抵抗歌ではないが、沖縄を取り巻く暗雲を突き抜けるメッセージがこもっている
▼コンサートの最中、「末期症状」という言葉を幾度か聞いた。沖縄防衛局は14日に辺野古沿岸部へ土砂を投入する。もちろん末期症状は沖縄ではなく政府側である。一体、どこまで沖縄を追い詰めるのか
▼そんな暗たんたる時代への抵抗といえるだろう。東京都の小金井市議会が普天間飛行場の辺野古移設問題について国民全体で論議することを求める意見書を可決した。賛成は13、反対10だった
▼可決への道のりは険しかった。政府の「辺野古が唯一」にあらがい、「国民的論議」による解決を目指そうという意志を示すだけでも困難が伴う。それだけに、重みのある決議だ。闇を照らす一筋の光明となればよい。