<金口木舌>ご飯論法の不誠実


社会
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 今年話題になった言葉に贈られる「新語・流行語大賞」のトップテンに「ご飯論法」が入った。国会審議で繰り返された論点のすり替えをやゆした言葉だ

▼「朝ご飯を食べましたか」と聞かれ、パンを食べていたのに「ご飯は食べていません」と答えるのは明らかに不誠実だ。政府は高度プロフェッショナル制度導入や入管難民法改正などを巡る野党の追及に対し、こういった答弁を繰り返した
▼毎日新聞が先月、言い換えを多用して印象を操作する安倍政権の体質を特集した。韓国人元徴用工訴訟に関し徴用工を「労働者」と言い立てた。移民は「外国人材」、自由貿易協定を意味するFTAは「TAG」(物品貿易協定)、武器輸出は「防衛装備移転」と言い換えている
▼沖縄に関わる言い換えでは、2016年に名護市安部で起きたオスプレイ墜落事故が思い浮かぶ。日本政府は事故機が大破したにもかかわらず「不時着」「着水」と発表し、矮小化(わいしょうか)した
▼これらは戦時中の「大本営発表」を想起させる。日本軍の敗走を「転進」、全滅を「玉砕」と美化し、戦争の実態を国民に隠した
▼権力者が問題を覆い隠した先に何が起きたか。沖縄戦で20万人を超える人が亡くなった。日中戦争から敗戦までに軍民合わせて310万人が犠牲になっている。主権者の一人として、論点のすり替えを見過ごすことはできない。