<金口木舌>勝ち続ける決意


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 勝ち続ける心境というのはどうなのだろう。山口県下関市の巌流島(船島)で剣豪と称された佐々木小次郎と闘った宮本武蔵。60戦以上、決闘し無敗で臨んだ一戦。遅刻して到着した後、佐々木を木刀で倒したといわれる

▼400年以上前に大決闘があった同じ下関で21日、一大勝負が繰り広げられた。将棋の羽生善治竜王に、広瀬章人八段が挑戦した。第31期竜王戦七番勝負の最終第7局だ
▼羽生竜王は通算100期の大記録を目指したが敗北。27年ぶりに無冠になった。27年間、タイトルを持ち続けたことも驚きだが、その間に次々と大記録を重ねた
▼1996年には七つのタイトルを同時に制覇し「七冠王」に。2017年には将棋史上初の「永世七冠」を成し遂げる。羽生さんが初めてタイトルを獲得した89年から17年までの29年間で、タイトルを獲得した棋士は延べ209人
▼うち半分近い99人が羽生さんだというから、その強さは計り知れない。広瀬新竜王や藤井聡太七段ら若手の台頭から、世代交代を予想する向きもある。だが、まだまだ勝ち続けるだろう
▼21日の対局後、「結果を出せなかったのは、実力が足りなかった」と反省し、「また次のチャンスをつかめたらいい」と前を見据えた。謙虚だが自信に裏打ちされた、決意と言ってもいい言葉だ。通算100期の「金字塔」を打ち立てる日はそう遠くはない。