<金口木舌>思いやりのプレゼント


社会
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 食糧難にあえいでいた戦後、法を守る立場から闇米を拒否し続けた裁判官が栄養失調で死亡した。悪法と知りつつその法を守るため刑に服したとされるソクラテスの精神に敬服していたという

▼哲学者の挿話を反面教師に、不条理な法律は改めるべきだという主張も成り立つ。他方、圧倒的な権力が法治国家を破壊するかのように民意に背き続ける現代である
▼正義に反する決まりにはおかしいと声を上げて当然だ。「よらしむべし」がまかり通ってはならない。しかし、あまりに規範意識が低くはないかと思わされる調査がある
▼日本自動車連盟(JAF)の全国調査で歩行者のいる信号機のない横断歩道で一時停止した車両は1割未満との結果が出た。9割が道路交通法に違反していることになる。停止率の全国平均は8・6%。気になる沖縄は9・5%で10人に1人が止まるかどうか
▼58・6%と突出して高い長野は、渡り終えた児童らが車にお辞儀することがあり、運転マナーの良さにつながっているとの指摘もある。いずれにせよ、横断歩道ありを示す◇の路面標示があれば、歩行者に気を配らなければならない
▼なかなか渡れずにいる歩行者は、どこかで渡りかねている自分の大切な人の姿に重ならないか。少し余裕を持ってハンドルを握ってはどうだろう。思いやりのプレゼントは自分の心も温かくしてくれるはずだ。