<金口木舌>歌町ってどこ?


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 年末年始、那覇市の国際通りを幾度か歩いた。観光客が発する中国語や韓国語が耳に飛び込んでくる。土産店の店先に並ぶ商品札にも外国語が目につく。外国人観光客の急増を実感する

▼路線バスの車内に据えられた液晶案内板にも4カ国語でバス停の名称を表示しているものがある。沖縄の施設名や地名の訳文を楽しみながら眺めている。中国語で面白い翻訳例を見つけたので紹介したい
▼「沖縄県政府」。字面だけで何を指しているかピンとくるはずだ。沖縄県庁である。若い人は「県庁を政府と呼ぶのか」と驚くだろうか。年配の方々は米統治下の琉球政府を連想するのでは
▼「歌町」はどの町かお分かりだろうか。那覇市のおもろまちのことだ。バス会社や案内板を作成した会社によると、専門家の意見を踏まえた当て字で、観光客の間では定着しているそうだ
▼沖縄を訪れる外国人観光客が「観光公害」という言葉を聞けば、どう感じるだろうか。観光客が大挙する土地で深刻化する生活環境の悪化を指す。地域の悩みを直截(ちょくせつ)に表現した造語だが、観光客に向かって「公害」では無礼だ
▼「観光公害」に代わる言葉を使うべきだという声もある。言い換え例に「オーバーツーリズム」があるが、ちょっと分かりにくい。観光振興と地域社会の調和を図る取り組みの中で適切な言葉が見つかるか。観光立県の宿題だ。