<金口木舌>国と国の境目にあるもの


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 関東と関西の境目を巡る議論は古い。どこまで「アホ」と言い、どこから「バカ」に変わるのか。かつて民放で調査して作った分布図がベストセラーになった。昨年は別の方言の地域差の本が話題になっている

▼関東と関西の境界はどこか。関東は「関所の東の意」と辞書にあるが、それも時代で変遷したらしい。奈良時代から鈴鹿、不破、愛発(あらち)の三関以東、その後、逢坂の関から東になり、中世以降は箱根の関から東の8カ国、すなわち関八州を称した(大辞泉)
▼江戸時代などは各関所で「関銭」と呼ばれる通行税が課された。幕府や豪族、寺社の重要な財源となった。その徴税のために関所が乱立して、交通や商業の障害にまでなったという
▼ではこれは現代版の関銭と呼ぶべきだろうか。日本を出国する際に一律千円を課す国際観光旅客税、いわゆる出国税が7日から導入された。観光、仕事に関係なく日本人でも徴収される
▼国税としては27年ぶりの新設という。政府は出国税で年間約500億円の税収を見込む。使途は決まっており、旅行環境の整備や日本の魅力発信、旅行者の満足度向上に充てる方針だ
▼那覇空港などでは出入国審査で顔認証技術による自動化ゲートの新設も予定される。とはいえ、地方が自由にできる財源ではない。始まったはいいが、くれぐれも「アホ」な使い方と批判されることがないように。