<金口木舌>貧困問題を解決するには


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 権力者や一部の金持ちの財産を奪い、民に分け与える義賊。石川五右衛門や鼠小僧次郎吉が有名だが、沖縄芝居にも運玉義留(うんたまぎるー)という架空の義賊が登場する

▼与那原町と西原町の間の境目の山、運玉森を拠点に、貧しい人たちを助けるために盗みを働く義留。西原町の小中高校生が出演する創作演劇「さわりんと運玉義留」にも登場する
▼世界で最も裕福な26人が所得の低い38億人の総資産と同額の資産を有していると国際NGO「Oxfam」が発表した。米アマゾン・ドットコム創業者の資産は1120億ドルで、その資産のわずか1%がエチオピアの保健医療予算全額に匹敵する
▼「世界には十分な富がある」とする報告書が提言するのは、富裕層や大企業への課税。最富裕層がたった0・5%多く納税すれば、良質な公共サービスによって貧しい人たちの生活を変えることができると強調する
▼18世紀初頭に活躍したとされる義留は日時を予告して王族や士族の家に盗みに入る怪盗。奪った金品を貧民へ分け与えるなど、民衆の英雄として民話で伝えられてきた。農民の出で、貧困にあえぐ民の味方だった
▼生活苦で将来を悲観した人による無理心中など、現代社会では貧困が背景にあるとみられる事件が後を絶たないが、解決策は見いだせていない。社会に義憤を感じても、義賊のような犯罪は許されるはずがない。