<金口木舌>その先へ


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 ゴーグルを着けた幼い少女が手と足を一生懸命に動かしている。泳ぎを模しているがプールではなく、部屋の床の上だ。昨年8月から放映されている東京海上日動のテレビコマーシャル

▼「泳いで、泳いで、ただひたすら泳いで、その先へ」とのメッセージも。主人公は2020年東京五輪で金メダルが期待される競泳女子のエース、池江璃花子(りかこ)選手だ。水泳がうまくなりたいという少女の熱意と第一線で活躍する選手の努力を垣間見ることができ胸を打たれる
▼その池江選手が12日、自身のツイッターで白血病と診断されたことを公表した。「しっかり治療をすれば完治する病気でもある」という言葉には前向きな姿勢で病気に打ち勝とうとする決意がにじむ。病名を公表した勇気と精神的な強さにも頭が下がる
▼その一方、またしても非常識な発言が閣僚から飛び出した。桜田義孝五輪相が「本当にがっかりしている」と述べたのである。病気に立ち向かおうとする人にかける言葉ではない
▼相手の立場になって考えれば分かることだ。議員としての資質さえ疑われる。13日の衆院予算委で「配慮を欠いた」として撤回したが、一度発した言葉は取り返しがつかない
▼麻生太郎氏をはじめ閣僚の不見識な発言が後を絶たないのは嘆かわしい。池江選手は治療に専念し、元気になってほしい。「その先」の笑顔を待っている。