<金口木舌>マナーと義務と


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 朝の通勤ラッシュ時、駅のエスカレーターで右側を駆け降りていく人に出会う。急ぐ気持ちは分かるが、混雑しているときはさすがに危ないと感じる

▼エスカレーターの片側を空けて乗るマナー。東京では左側に立って右側を空けて通すが、大阪は逆。出張時で行き来すると戸惑うこともある。文化人類学者の斗鬼正一江戸川大教授によると、「エスカレーターの片側空け」はロンドンの地下鉄が世界初で、左側を空けるスタイル。日本初は阪急梅田駅でロンドン式だった
▼JR東日本などは2020年の東京五輪期間中の公共交通利用客増を見込み、事故防止のためエスカレーターを歩かないよう呼び掛ける。従来は片側を歩行者用に空けているのを、2列とも立ったままにしようというものだ
▼五輪に向けた対応は他にもある。都や政府などが道路の混雑緩和で首都高速道路の料金値上げを検討している。複数の人が相乗りする車専用のレーンを設けることも対策に含まれる
▼値上げ幅など詳細はこれからだが、「逆に一般道が混む」との批判も聞く。五輪の開催そのものを疑問視する声まで上がる。1964年の東京五輪に際し渋滞緩和をうたって建設が進められた首都高だけに皮肉な話だ
▼東京五輪のためと言えば、何でも許される。そんな「圧力」のような空気が広がっていけば、息苦しい世の中になってしまう。