<金口木舌>はなむけの言葉


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 大勢のスポーツ選手がことしも来県した。この時季、朝から雨模様だと、持ちこたえてくれと願う人もいたのではないか。プロ野球・国内球団の沖縄キャンプは今週中に終了する

▼雨模様とは降り出しそうな空のこと。降ったりやんだりの意で使うのは誤用だ。文化庁の調査では2003年時点で後者を指すとの答えが正答を上回った。さらにその用法が広がっているかもしれない
▼知人の教師から聞いた。「はなむけ」に「花向け」を当てた生徒がいた。語源は馬の鼻を行き先に向けることだから、これは誤り。ただ、知人は花を贈る意味を重ねた生徒の気立てに感心したそうだ
▼卒業の季節。はなむけの言葉を考えている人もいるだろう。本紙オピニオン面で児童生徒が投稿する「僕の主張・私の意見」は年度の締めくくりに向けた内容が増えてきた
▼別れの寂しさを隠せない北谷高3年の小波津忠馬さん。しかし「卒業しないと前に進めない。進むしかない」と決然と前を向く。具志川商3年の山根咲笑さんはけがの時期を支えた仲間が「一生の宝物」だと感謝をつづった
▼生徒たちは仲間や恩師との時間を大切に過ごしているだろう。職場や家庭でも旅立ちを前にした人がいるはずだ。残りの1カ月。特別な言葉や物がなくとも、「花向け」と書いた生徒のように相手を思って送り出すことができれば、それがすてきなはなむけとなる。