<金口木舌>ウチカビ、石敢當のある街


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 朝の市場を歩くと、グソー(あの世)のお金、ウチカビを女性が燃やしていた。建物の壁に魔よけの石敢當があった。沖縄で見掛ける風景が対岸の街、中国福建省福州市にあった

▼6年前の3月、尖閣諸島をめぐって反日の嵐が吹き荒れる中国を取材した。同じ時期に新石垣空港が開港した。偶然見た中国のテレビニュースで「民用?軍用?」の字幕で伝えられていたことに驚いた
▼沿岸部はかつて台湾とにらみあった最前線。取材すると、住民らは尖閣の火種がこれ以上拡大しないことを求めていた。生活文化だけではない。平和への思いは沖縄と共通していた
▼日中関係が悪化し、文化交流や観光の分野では冷や水を浴びせられたが、6年前に比べ現在は活発になっている。中国からの観光客数は沖縄を含め増加の一途だ
▼省都福州市の別名は榕城。沖縄でもなじみのあるガジュマル(榕樹(ようじゅ))が街中に生える。沖縄と福建は600年に及ぶ交流がある。友好都市を1997年に結び、2017年に20年式典があった。その時に約束された石獅子が11日、友好の証しとして福建省から沖縄に贈られた
▼名護市の万国津梁(しんりょう)館に設置された石獅子には太平と子孫繁栄の願いが込められた。除幕式で双方の代表者が固く握手し、絆を育むと誓った。ガジュマルのように太くなればいい。対岸に向けられた石獅子も見守っている。