<金口木舌>抑圧する側の意識


社会
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 酒に酔った女性に乱暴したとして準強姦(ごうかん)罪に問われた会社役員の男性に、福岡地裁久留米支部が12日、無罪判決を言い渡した。「女性が同意していると誤信していた」というのが理由だ

▼判決は女性がテキーラを数回一気飲みさせられ、酔って抵抗できない状態だったと指摘した。一方で「女性から明確に拒否する意思も示されておらず(男性は)許容されていると思い込んだ」とした
▼15日には就職活動中の女子大学生を自宅に連れ込んでわいせつな行為をしたとして、強制わいせつの疑いで逮捕された大手ゼネコンの男性社員を東京地検が不起訴処分としている
▼司法には推定無罪の原則がある。しかし明確に拒否されなかったことは性行為の同意にはならない。泥酔した女性、就職活動中の女子大学生は男性と対等な立場とは言えない。表沙汰になる性犯罪が「氷山の一角」と言われる中、被害を訴え出ようとする女性を萎縮させかねない
▼日本では諸外国ほど「#MeToo」運動が盛り上がっていないと指摘される。前財務事務次官によるセクハラを告発した女性記者や、性的被害を告発したジャーナリストの伊藤詩織さんがバッシングにさらされたことも記憶に新しい
▼欧米では性被害を訴える女性たちを支える男性の動きも盛んだ。抑圧している側の意識が変わることが、息苦しい状況を変える近道になるはずだ。