<金口木舌>平成のティッシュペーパー


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 10月に消費税が10%に引き上げられる。増税が消費心理を冷え込ませたり、小売店などの経営を圧迫したりする懸念も上がる。消費税法が施行され、税率3%で始まったのは平成元年の1989年

▼消費税は平成と共に歩んできた。97年には5%、2014年には8%に増税された。こちらは特別な税金がかけられているわけではない。ティッシュペーパーが594円。16年時点の価格で市価の約4・5倍という
▼大阪刑務所(堺市)内で販売する日用品が高額で人権侵害に当たるとして、大阪弁護士会が所長に改善を勧告した。受刑者が刑務作業で得られる報奨金は月約4500円だ
▼生活物資の高値が逃亡の要因になったことがある。受刑者ではない。ブラジル移民だ。1908年、笠戸丸で渡った県人移民1世は苦難の連続だった。「ブラジル沖縄県人移民史」によると、日常品は耕地の主と直結したベンダと呼ばれる売店で掛け売りする仕組みだった
▼雇い主が発行する「手形」で購入するが、価格は驚くほど高かった。そこで買い求めるしかなく、生活は窮地に追い込まれる。栽培した作物も搾取された上に借金もかさんだ
▼過酷な労働と将来への不安から、逃亡する移民も多かった。受刑者に対しても、他に選択肢がない中で市価より高い値段で売ることは問題がある。人権侵害と言われても仕方がない。