<金口木舌>他者への気遣い


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 ツバメが人家に巣を作るのは天敵を避けるためだという。人が生活するところにはヘビやカラスなどが少なく、ひなを安全に育てられる。軒下で雨を避けられるのも理由の一つ

▼人の近くと言っても、車など動く物にはさすがのツバメも巣はかけない。人をあやめる凶器ともなることなど鳥が分かるはずはないのだが。貴い命が犠牲になる交通事故が各地で後を絶たない。幼児の被害を聞くと何ともやるせない
▼居ても立ってもいられなかったのだろう。登校時に交通安全指導のボランティアに立っている沖縄市の50代男性から電話をもらった。「どうにかして意識改革しなければ、また同じような事故が繰り返される」
▼男性によると、横断し始める子どもたちを守るように黄色の旗を差し出しても、強引に曲がってくる車がある。送迎時の停車が禁止されている場所で子どもを降ろす親がいる
▼スマートフォンをいじっているように見えるドライバーも相変わらず多い。滋賀県で2歳児2人が犠牲になった事故が大きく報じられても、通学路でのマナーが改善されたと感じることは特段ないそうだ
▼野鳥を愛する心を持つわれわれである。他者への気遣いを思い起こそう。エンジン始動時には事故で奪われた命について思いを致し、自らを省みて気持ちを引き締める。思いやりや心遣いが交通安全の原点であろう。