<金口木舌>「あちねー物語」は続く

 お目当ての食材があるというわけではないが、那覇市の牧志第一公設市場の構内やその周辺をほっつき歩くことがある。近くに点在する古書店にも立ち寄る。休日の、ちょっとした楽しみになっている

▼いつもの店にいつもの店主、おなじみの品ぞろえ。変わらないという安心感がある。そんな公設市場も大きな変化を控えている。現在の建物での営業は6月中旬まで。7月1日には仮店舗に市場は移る
▼長年、市場を守ってきた人々を本紙連載「まちぐゎーあちねー物語」で紹介している。つくづく思う。市場内の店それぞれがドラマを生む舞台。店ごとの物語をつむいできた
▼ドラマを彩るのは、いつの時代でも強くてたくましい女性たちである。「ペリー提督日本遠征記」に面白い記述があることを那覇市歴史博物館で開催中の企画展「那覇の市場」で知った
▼1854年1月、4度目の来沖を果たした一行は異国の民を前に泰然と構える市場の女性たちに注目する。「市場から逃げるようなことはせず、見たところ、外国の闖入(ちんにゅう)者共に無関心で、自分達の露店の番をしていた」
▼165年前、店を守ってきた女性たちの姿が目に浮かぶ。何が起きても市場をしっかり支える。こんな店主は今もいるはずだ。現在の公設市場はもうすぐ見納めとなる。寂しいが仮店舗も歴史の一コマだ。「あちねー物語」はまだまだ続く。