<金口木舌>地域の歴史に学ぶ


社会
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 那覇市若狭にある那覇クルーズターミナルの岸壁の番号は泊8号だ。ほぼ毎日、クルーズ船が離着岸する。16万トン級の船が接岸すると巨大複合施設が波路を移動してきたような迫力がある

▼最近は錨(いかり)を使わなくても定点にとどまれる技術がある。自動船位保持システムのことだ。スクリューや横方向の推力を生むスラスターを併用して位置を保つ
▼投錨(とうびょう)できない場所で作業する船が装備する。サンゴ礁など海底の保護が求められる海域にも就航できる。技術の革新が生活の利便性を高める。科学技術が発達していなかった時代の苦労はいずれ忘れ去られるのだろうか
▼「不便でも懸命だった生活を伝え残したい」。戦前、物資運搬に用いた荷馬車を読谷村の渡慶次憲雄さん(91)が木工模型で復元した。子どもたちに歴史を継承したいとの思いで記憶を基に頭の中に設計図を引いた
▼読谷村は復帰運動や戦後教育に関する資料のデジタル化を進める。写真資料が村役場で30日まで公開中だ。復帰闘争を知らない世代が増える中、関心を持ってもらうためだ。復帰から47年。最新技術で歴史を伝える
▼社会に船出する子どもたちが歴史を学ぶことはアンカーのように地域に根差した視点を育み、異文化への理解を深めることにもつながるだろう。選良が他国との戦争を選択肢に挙げる現代だ。歴史に親しむ意義をより強く感じる。