<金口木舌>ジャッジに目を凝らせ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 大相撲の場所中、連日の最後の取組は結びの一番。これをさばくのは行司の最高位である立行司である。短刀を持っていて、判定を誤れば切腹する覚悟を示しているとされる

▼今でも、誤審ではなく「行司軍配差し違え」と言われる。責任の在りかを明確に示す厳しさと同時に、さばく者への敬意がその言葉から伝わってくる。だが、そのたびに切腹となってはたまらない
▼実際の責任は土俵下の勝負審判にある。物言いの際に使うビデオ判定はこの夏場所で導入から50年。すっかり定着した。差し違えから取り直しにでもなれば、沸き立ちこそすれ、怒るファンは少ないだろう
▼主審を上回る権限を持つ役向きはレスリングや重量挙げなどにもいて陪審やジュリーと呼ばれる。映像判定も多くの競技に広がった。プロ野球ではリクエスト、テニスではチャレンジで機器を用い精密に判定できる
▼精度を高めるための改革も進められてきた。選挙における審判はわれわれ有権者だ。参院選が4日に公示される。掲示板が設置されて、準備が整ってきた
▼大相撲のビデオ判定導入は横綱大鵬の連勝を45で止めた誤審がきっかけだ。以来、勝敗の判断はつきやすくなった。選挙ではそうはいかない。政策が勇み足ではないか。肩すかしに遭わないか。「差し違え」をしないよう目を凝らし、投票所に足を運ぶことが大切だ。