<金口木舌>楽しく学ぶ夏休み


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 遊び仲間と一緒に道路わきや住宅の周囲で空き瓶を拾い集め、商店に届ける。1本5円程度で買い取ってくれた。そのお金でジュースを買い、瓶を集めた仲間同士で回し飲みをした

▼小学低学年の頃の思い出だ。小遣い稼ぎ、ジュース目当てに空き瓶回収を楽しんでいた。リサイクルという言葉は知らなかったが、瓶は何度でも使える大切な資源だということは学んだ
▼小遣い稼ぎでも、これは変わり種。1950年代、羽地村は農作物に被害を与えるネズミを駆除するため、住民が集めたネズミの尾を1本2セントで買い取った。熱を上げたのは子どもたちだ
▼58年11月29日付本紙は「生徒などのアルバイトとして喜ばれており一カ年で4千余の尾が役所に持ち込まれる」と伝えている。小遣いを稼ぎながら、子どもたちはネズミに悩む農家の苦労に触れたであろう
▼「1本2セント」には先例がある。敗戦後、愛媛県宇和海の島々で起きた「ねずみ騒動」で、役場は「1本3円」でネズミの尾を買った。騒動を題材にした吉村昭さんの小説「海の鼠」によると、子どもたちは釣り道具でネズミを捕まえたという。大人の意表を突く知恵だ
▼夏休みに入った。「学びの夏」と言ったら、子どもたちはげんなりするだろうか。教科書に載っていない生きた知恵を楽しく学ぶ機会にしたい。瓶回収でジュースを買ったおじさんの提案だ。