<金口木舌>青春を奪うな


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 高校生が躍動する南部九州総体も終盤だ。最後の総体に懸ける3年生はもちろん、重量挙げ準優勝の本部高1年比嘉力選手ら後輩の活躍も頼もしい。次の出場を狙う生徒にも刺激となる

▼来年の総体開催が危ぶまれているという。主催する全国高体連のホームページを見て目を疑った。開催地は北関東だが、東京五輪と重なり宿舎が足りない。全国での分散開催が決まった
▼受け入れ自治体も急きょの決定で開催費が賄えない。出場機会を奪うことがあってはならないと全国高体連は特別基金への寄付を企業などに広く求めてきた
▼今回の総体の開催に合わせクラウドファンディングも始めた。全競技開催のため経費を削減してもなお足りない4千万円を目標としているが、周知不足もあるようだ。五輪誘致に当たって事前調整はできなかったのか
▼高校総体からは多くのオリンピアンが生まれた。日本オリンピック委員会の山下泰裕会長もその一人。東西対立でボイコットしたモスクワ五輪で涙をのんだ代表でもある。国内スポーツの統括団体の長はこの問題をどう見るか
▼「復興五輪」とも名付けられながら東京で開催される2020大会には疑問の声もある。五輪のためとはいえ高校生の活躍の場が奪われていいはずがない。負けた悔しさではなく、五輪のせいで出場できない悔しさを味わわせるわけにはいかない。