<金口木舌>青い空目指して


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 秋の空は移ろいやすい。降ったり照ったりだけでなく、晴れた日も雲がさまざまに表情を変える。山口誓子は「秋の雲はてなき瑠璃(るり)の天をゆく」と詠んだ

▼瑠璃色の空をどこまでも飛んでいく雲が目に浮かぶ。果てもなく先を目指す雲のように限界のない挑戦は爽やかさを感じさせる。コザ高3年の比嘉輝(ひかる)さんがハンドボールの指導員を目指し、公式戦で審判デビューした
▼けがで離れた競技で再び夢を追い掛ける。どの競技でも審判による試合の統制は重要だ。激しい接触の多いハンドボールだとなおさらだろう。進行の遅延につながるパッシブの見極めなど、難しい判断も求められる
▼日本野球機構で審判長を務める県出身の友寄正人さんは同じように高校生のころから県内の大会で審判を務め始めた。正確さが求められるジャッジについて「この仕事に10割はない」と話す
▼完璧を目指し、常に努力をしていくのが職分だと本紙インタビューに語ったことがある。審判技術の向上に大切なのは「素直な心」だとも指摘した。競技へと再び導いてくれた恩師や温かく見守ってくれる家族に感謝する比嘉さんだ。きっとうまくいくだろう
▼努力を重ねて、困難を乗り越えた先に喜びがあることを表す言葉に「雲外蒼天(うんがいそうてん)」がある。蒼(あお)い空を目指して厚い雲を抜ける挑戦者たちの闘いは、見守る私たちまで勇気づけてくれる。