<金口木舌>軍事利用を止めた日


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 伊江港―本部港を結ぶフェリーは1日4往復。本部港では奄美や那覇を結ぶ貨客船も行き交う。17日、本部港の前に二重の人垣ができた。市民や港湾で働く人など100人余が集まった

▼米軍はこの日と21日に訓練で使用すると通告した。実行されれば米軍による民間港使用は本島で初めて。小型船を運ぶ米軍のトラックと阻止する人々のにらみ合いは10時間続き、米軍は搬入を断念した
▼沖縄地区港湾労働組合協議会の山口順市議長は憤った。「私たちは安全な職場環境を求めているだけだ。通告を新聞報道で知った」。港の軍事利用が進み、何も知らされないまま危険物の運搬に従事する。物流を担う者として危険が高まることを懸念した
▼隣の名護市では辺野古弾薬庫と接する高さ30メートルほどの崖が崩落したが、住民には何も知らされていない。保管されている危険物の内容も不明だ。県民の命や暮らしよりも軍機を優先する実態が目の前にある
▼米軍が本部港の使用を断念したことに、河野太郎防衛相は「(米側との)交渉がやりづらくなる」と述べた。その視界に県民は入っていないようだ
▼再通告の懸念は残るが、抗議した人々は「民間港の軍事利用を止めた」と意義を強調した。港で働く人たちも「これで帰るよ」と本部港から那覇行きのフェリーに乗り込んだ。表情から険しさは消え、笑顔が浮かんでいた。