暮れの官邸は、仲井真弘多知事と安倍晋三首相の会談を待つ記者たちが群れていた。ひときわ高い声で放送局の記者が言った。「振興と基地は別だなんて、そんなこと、他府県だったら言えないでしょう」
▼仲井真知事が名護市辺野古の埋め立てを承認するか否かが焦点だった。くだんの記者発言の意はこうだ。基地の見返りに予算をもらったのに政府に反するなんて、あり得ない
▼沖縄は金で片が付く。その印象をさらに強めたのが仲井真知事の言動だった。「何から何までしていただいた。(中略)さすがに安倍総理」と持ち上げ、帰り際には記者に「ハバ ハッピーニューイヤー」と言い放った
▼今回の予算は明らかに基地との“リンク”だが、それにしても腑(ふ)に落ちない。10年間3千億円台を「有史以来の予算」と評した知事発言は事実に反する。1995年度から9年間、当初予算ベースで3千億円台で、今回獲得した額より多い年もある
▼沖縄を力で押さえつけ、米国には進展を、国内向けには「決められる政治」を演出した。安倍首相はさぞご満悦だろう。県民が最も望む基地の負担軽減で具体策は示せなかったにもかかわらず
▼どこの住民であっても、地域の安全と振興の両方を望むのは当たり前だ。なぜ沖縄だけ基地か経済かの二者択一を迫られないといけないのか。それこそ「他府県では考えられない」のだが。