<社説>安倍政権の公私混同 違法なら辞任は免れない


社会
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 首相主催の「桜を見る会」に多数の後援会関係者が招かれていた問題で、安倍晋三首相に千人程度の推薦枠があったことが明らかになった。首相と別に副総理と官房長官、官房副長官に計千人、自民党に6千人の枠があった。

 推薦枠は首相夫人の昭恵氏も持っていたという。学校法人「森友学園」への国有地売却を巡り学園と昭恵夫人の関係が問題となった際に、政府は「首相夫人は公人ではなく私人」とする答弁書を閣議決定した。公的行事の招待権限を私人に与えていたことになり、「私物化」を政府自ら認めたことになる。
 桜を見る会の参加者は2014年に約1万3700人だったのが、今年は約1万8200人に膨れ上がった。各界の功績・功労者という基準に関係なく、首相をはじめ与党議員が自身の支持者を大量に招いた結果、人数と費用が野放図に膨張してきた。
 公費を使ったえこひいきであり、目に余る公私混同だ。
 自民党が支持拡大のため公的行事を組織的に利用したのであれば、問題は道義的責任というだけにとどまらない。これだけの後援者を招いて飲食物を無償で提供する行為は、公職選挙法が禁じる寄付行為に該当する疑いがある。
 買収・供応ではないかという野党の追及に対し、菅義偉官房長官は「当たらない」と答弁している。しかし、地元招待者の人選への関与を否定してきた安倍首相が従来の答弁を修正した経緯もあり、にわかには信じ難い。
 疑惑はもう一つある。東京都内のホテルで開かれた安倍後援会による桜を見る会「前夜祭」の資金の収支だ。前夜祭の会費は1人5千円だが、ホテルニューオータニの宴会相場は1万1千円からだ。6千円の差額を後援会が補塡(ほてん)していれば、公選法などに違反する疑いが生じる。
 後援会の補塡ではなくホテル側の負担だとしても、政治資金規正法は企業・団体が政党や政治資金団体以外に寄付することを禁止する。割引分がホテルの寄付として、違法献金に当たる可能性がある。
 公選法を巡る疑惑は閣僚の辞任に直結する。選挙区の有権者に秘書が香典を渡していた菅原一秀前経済産業相、妻の参院議員に公選法違反の疑いが報じられた河井克行前法相の辞任は記憶に新しい。
 選挙区の有権者を観劇会に招くなどした小渕優子元経産相、うちわを配った松島みどり元法相、建設会社から金銭を受け取った甘利明元経済再生担当相らも辞任した。
 桜を見る会、前夜祭を巡る対応も法律に抵触しないか究明が必要だ。違法ならば安倍首相の辞任は避けられない。
 首相は政治資金規正法違反には「全く当たらない」と主張している。そうであれば野党が求める衆参両院予算委の集中審議に応じ、自ら資料を示して疑問に答えるべきだ。それができないのなら、司直による解明を待つしかない。