<社説>米軍ヘリ本島沖墜落 日米訓練やめ原因究明を


社会
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 何度繰り返せば「再発防止」が成るのだろうか。

 米海軍のMH60ヘリコプター1機が25日午後、那覇空港の東約174キロの公海上に墜落した。
 沖縄が日本に復帰して以降、51件目の墜落事故だ。その度に米軍や防衛省は再発防止を強調するが、事故の検証や責任の所在を明らかにする前に飛行を再開するという暴挙を繰り返している。
 この小さな島で米軍基地と隣り合わせに暮らし、日々、頭上を米軍機が飛び交う沖縄県民はたまったものではない。米軍は事故原因がはっきりするまで同型機の飛行を停止すべきだ。
 事故機は米海軍第7艦隊の指揮艦ブルーリッジに所属し、神奈川県横須賀市の横須賀海軍施設が母港だ。しかし同型機は国頭村と東村にまたがる米軍北部訓練場やその返還地上空で訓練飛行を繰り返しているのが目撃されている。今回の事故機を搭載したブルーリッジも県内への寄港は確認されていないが本島東沖に停泊していたという。
 県には同日午後5時すぎ、事故の一報が自衛隊から入った。幸いにも乗員5人は無事なようだが、米海軍は事故時の状況などを「MH60は通常の運用をしていた」とするだけで、詳細を明らかにしていない。
 県内周辺にはホテル・ホテル水域など27カ所、5万4937平方キロメートルもの広大な海域が訓練水域として米軍に提供されている。そこでどのような訓練がされているかは全く明らかにされない。県民にとってはまさにブラックボックスだ。
 さらに防衛省は事故について「墜落」ではなく「着水」と説明する。MH60に飛行艇の機能はなく運用上、「着水」はできない。米海軍の発表は「went down」と表記しており、この語には「落ちる」「墜落」の意味も含まれるにもかかわらず、である。
 こうした対応は2016年12月に名護市安部で起きたMV22オスプレイの墜落事故を想起させる。機首が折れ、翼も吹き飛んだ状態で海岸に無残な姿をさらしたオスプレイを、防衛省は「不時着」と説明し、海上にあることを指摘されると「不時着水」と言い換えた。問題を矮小(わいしょう)化する姿勢は容認し難い。今回の事故を「着水」と言う意図も同じだろう。
 事故の当日から、米海軍は陸上自衛隊との日米共同訓練を金武町の米軍ブルービーチ訓練場や沖縄周辺海域で実施している。墜落との関連が疑われるが、陸自関係者は「関係ない」として共同訓練を続けた。
 米軍機は13年からの軍事予算削減によって老朽化し、事故増加の原因と指摘される。事故増加に脅かされ、被害を受けるのは県民だ。日米は事故発生にもかかわらず、共同訓練を続けているが、まずは訓練を中止し、原因究明と公表に全力を注ぐべきだ。